１９９８年１月１５日

なぜ、Ｊ昇格出来なかったか。

1. チーム設立の経緯の差
   • 本音は誘致だった？
     　「仙台にＪリーグチームを！」というのを具体的に推進したのは、宮城 県でした。工場誘致の場合、行政は、道路とか工業団地とか工業用水道と かを整備して、工場の立地条件を良くして工場を誘致しようとします。（ 基盤整備と呼ぶそうです。）当たり前ですが、県営の工場設立と言う事は 夢にも考えてはいません。工場設立の投資リスクは、企業が負うもので、 行政は負いません。Ｊチーム設立についても、行政側の考えとしては、基 盤整備をして「夢」を実現させたいというものだったでしょう。

   • あせり
     　平成５年当時、Ｊリーグは最終的に１６チーム程度と考えられていまし た。既に、複数のＪ準会員が存在しており、急がないと残り枠に滑り込め ないという雰囲気はありました。結局、この急ぐという事が大赤字の根底 にあるように思います。時間をお金で買う必要に迫られました。
     　時間がない事は、チーム誘致交渉にも影響があったとも考えられます。 　「当方の条件はこれこれ。さあ、来て頂戴。」という雰囲気の交渉では、 清水（きよみず）の舞台を飛び降りるような決断を促す効果も無かったと 思います。企業に対する誘致交渉については、お願いする方が回答の日限 を区切ったりとか、電話で交渉したとか、熱心さに欠けた対応があったと いう趣旨の記事が日本経済新聞東北経済面に書かれていた記憶があります。 三顧の礼を尽くす時間をかけられなかったのでしょうか。東芝に断られた 後も、大塚製薬に声をかけたとか言う話も報道されておりました。
     　一方、札幌は民間主導でチームを誘致し、チーム運営費を東芝に頼らな いという、東芝が飲める線を探りながら交渉したようです。コンサドーレ も９７年に赤字を出しましたが、ぜひ成功して欲しいです。

2. チームの基盤の差
   　地域リーグから上がった東北電力サッカー部を基盤にするのと、ＪＦＬ で活躍していた東芝サッカー部を基盤にするのでは、スタートラインから 差があっただろうと思います。札幌はどうだったのかよくわかりません が、仙台については河北新報がフロントと現場の不協和音とか書いてい ました。フロント内部の不協和音もあったかもしれません。それぞれ別 の利害・思惑を持っていたのでしょうか。
   • 編成能力の差
     　 　仙台も鳥栖フューチャーズも、毎年、猫の目の様な編成方針の変更をし て失敗しました。札幌も社員選手に大鉈を振るい、東芝時代からのファン の気持ちを曇らせましたが、結果としては成功しました。この差は、フロ ントの編成担当者の力量の差だと考えています。ＪＦＬのレベル、Ｊリー グのレベル、採用しようとする選手の力量の見極めの目の有無の差だと思 います。
     　サッカーがプロ化されたと言っても、選手の移籍や採用は、新人選手に しても大物選手を獲得するにしても、人脈が有効のようです。強力なチー ムに広く人脈を持つ人材の存在は、チーム強化に不可欠だと思います。仙 台にはそういう人材はいなかったようです。

   • 入り乱れた人脈の食い物に・・・
     　選手の縁故採用と縁故重視起用は、過去２年間の仙台でイヤという程、 見せられたように思います。仙台は、Ｊ昇格には半端な投資金額だったの かもしれませんが、選手の選択に、もう少し有効なお金の使い方をしてい れば、ＪＦＬ上位もねらえたと思います。元Ｊリーガーと言っても自信な さそうなおどおどしたプレーしか出来ない選手も実際にいました。
     　縁故起用の弊害か、調子の悪い選手が出て、調子の良い選手が出ないとい う事もありました。選手間の信頼感も極度に低下し、チームとして形にな っていない時期もありました。
     　縁故採用が、日本的と言えるか分かりませんが、外国人監督と選手につ いても、縁故重視がみられましたので、万国共通の事なのでしょう。要は、 そういう縁故採用の要求をどれだけ排除して、強いチームを編成出来るか だと思います。

   • 競技としてのサッカーのプロがフロントにいたか？
     　リトバルスキーにしても、縁故採用＆起用をしましたし、翌シーズンに は彼自身がその被害者になったと、私はみています。フロントがリトバル スキー、エルスナー＆ルスに、人事権を与える条件で契約した事がこうし た訳のわからない事を招いたと思います。フロントのマネージャーが自身 の編成能力について、信念と確信がないから、こういう契約を許す訳です し、危険分散と言う事で逃げてしまったのだろうと思います。チームの編 成をするには、同レベルのリーグでの監督経験が必要だと思います。その 点、仙台のフロントには興行のプロはいたのかもしれませんが、競技とし てのサッカーのプロはいなかったと結論を下す他はありません。
     　毎年、方針変更。チームとしての熟成も進まない。確信の無い方針は。 外部の雑音に屈して簡単にぐらついた。

   • 外国人選手の差
     　残念ながら、日本のレベルは低いので、外国人選手・監督・コーチの活用 は結果に大きく影響する。
     　札幌の外国人３人は、日本の事情にも詳しく、日本での実績がはっきりし ていた事もあり、リスクは少なかった。
     　仙台の場合、９７年のシーズンの外国人選手の中には、失笑を招くプレー しかできないのがいて、最悪であった。監督のエルスナーに人選を任せたの であろうが、彼は、日本の事情に疎かった。日本人ＤＦの水準も分からず、 選手を選んで連れてきた。あとから、デゥバイッチを連れてくるといった人 脈の広さも見せたが、最初にこれを見せてもらえば、だいぶ違ったと思う。

   • 監督の差
     　監督を選ぶのは、フロントの仕事であり、この失敗はフロントの責任であ る。外国人選手を使うには、日本人ではナメられてしまったかもしれないが 、外国人監督を使うなら日本の実状をよく知った人でなければ、短期間の強 化は難しかった。その点、札幌の監督人選は成功していた。
     　リトバルスキーを実質監督としたのは、責任の所在が不明確となった。連 敗したときのファンからの文句は、名目上の監督であった佐藤長栄氏へ集中 し、リトバルスキーは矢面にたたされる事はなかった。これは、アンフェア である。
     　彼は監督の経験は無かったし、自分をいつでも出場させた。ワールドカッ プで優勝した選手であっても、自分の評価を正しく出来なかったのだろうか。 Ｊリーグの水準についてはよく知っていただろうが、ＪＦＬについては甘く 見ていたと思われる。最初から厳しく考えていれば、シーズン途中でシュテ ゥンプを補強する必要はなかっただろうし、自分がリベロをやろうとは思わ なかっただろう。
     　エルスナーは日本の事情に全く疎かった。選手の能力に合わない戦術を強 要したし、日本人の心情・文化を理解した采配も出来なかった。結果が出な い以上、選手達からの信頼感も低下したと思われる。復調のきっかけすら見 いだせないまま、途中で逃げだす事となった。彼の場合、彼自身の問題とい うよりは、彼を選んで連れてきた人の責任だろう。時間があれば凄い結果を 出しただろうにと思うと残念に思う。

3. 燃えない市民
   　後まわしになってしまったが、とくにサッカーに興味の無い人達の感度の 低さは、札幌と一番違うところではなかったか。札幌に、もともとサッカー のファンが多かったとは、どうしても思えない。サッカーが強い土地柄でも ないし、むしろスケートとかスキーの方がメージャーだと思う。人々のノリ の良さとか、周囲を巻き込む雰囲気作りに秀でた人材とか、もろもろの基盤 が札幌にはあったのではないだろうか。
   • 地域意識の差
     　私の推測では、北海道のみなさんは、「内地」のチームを相手にしたとき、 札幌を表看板にして、道産子がんばれと叫ぶのに抵抗がないのだろうと思い ます。室蘭でも釧路でも旭川でも函館でも。（北海道の人に聞いてみたい。 違ってたらこの部分書き直します。）
     　仙台の人口の半分位は”よそ”の土地から来た人じゃないだろうか。３０ 年位前の仙台市の人口は、約６０万人。今は、１００万人。生まれたんじゃ なくて、引っ越して来た人がほとんどでしょう。東北各地から来た人も多く それぞれの地元に歴史と誇りを持っている。「仙台」だけじゃ燃えないので はないでしょうか。
     　それとも、コンサドーレが強かった事だけが燃えた理由だったんでしょう か。だったら、なんとなく寂しい。

   • コミュニティーの欠如
     　七夕祭は昔からの商店街だけの祭という雰囲気があります。一般の人が主 体的に参加出来る機会はあまりなさそうです。半世紀以上の中断を経て、近 年、復活した５月の青葉祭も、どこかの会社や学校が参加の基礎単位になっ ているような気もします。この祭には、「雀踊り」がありますが、私は踊っ た事がありません。踊っている人があまり楽しそうに見えません。ねぶた祭 の様なフィーバー現象もありません。
     　祭が行えなくなったというのは、門前町の凋落というかコミュニティー基 盤の喪失と無関係ではないでしょう。七夕祭は継続していますが、核となる 市中心部の商店街のコミュニティーは、新しく増えた市民を取り込むような 背景や動機は持っていません。バブル崩壊で店が変わり、商店街のコミュニ ティー自体も変質しているような気がします。 　一方、札幌の雪祭りって、よそから見ていると、勝手に参加できそうな場 がありそうですし、何年か前の選挙での元祖「勝手連」からも、何か主体的に 動ける人達がたくさん暮らしている街だという気がします。

4. 経済力
   　これを言うと悲しい。東北一の大都市と言うが、経済的には植民地。地場 の資本は弱い。工業出荷額で言うと東北６県のそれは、静岡県１県分と似た ような金額になるそうだ。この点は札幌も支店経済の地ですから、仙台と大 差なし。要は、何かを主体的にやった経験のあるコミュニティーの厚さの差 が大きいのだろうという、結論みたいな話になってきそうな気がするのです。

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